五平餅

由来

神道において神に捧げる「御幣」の形をしていることからこの名がついたとするのが一般的である。実際、「御幣餅」と表記して販売しているところもある。
また五平、あるいは五兵衛という人物(樵であったり猟師であったり、また大工とするものもある)が飯を潰して味噌をつけて焼いて食べたのが始まりとする伝承も各地に形を変えて存在する。
いずれにせよ、江戸時代中期頃に木曽・伊那地方の山に暮らす人々によって作られていたものが起源というのが濃厚である。米が貴重であった時代、ハレの食べ物として祭りや祝いの場で捧げられ、食べられていた。

販売形態

中部地方のドライブインや道の駅、峠の茶屋、高速道路のサービスエリアなどでよく販売されている。
また、スーパーマーケットのフードコート内ファストフード店(お好み焼きやみたらし団子、大判焼きなどを販売する店)でもしばしば販売されている。
天竜川沿いには鮎などを炭火で焼いて食べさせる店が点在するが、たいてい五平餅も併せてメニューにのせている。木曽・飛騨・東濃地方には、これを主な売り物とする五平餅店もある。
また真空パックの商品もあり、インターネット上から通信販売で購入することも可能である。他の郷土料理と同様に、東京など他の大都市で扱う店も一部にある。

一般的な作り方

【1】①粳米(うるちまい)を炊く。

【2】①を潰し、厚さ2mm 幅2cm程度の杉板または幅1.5cm程の平たい竹串、あるいは割っていない割り箸に扁平な楕円形、地元で言う「わらじ型」に練りつけ、型崩れしないように素焼きする。
この際に塩や、つなぎの小麦粉を入れる地域もある。

【3】タレは季節や地方毎に多彩で醤油または味噌に砂糖を多めに入れ、胡麻、胡桃、落花生、エゴマなど油脂を含むものや木の芽、柚味噌をあわせてタレを作る。

【4】タレを2に塗り、香ばしく焼き上げる。
上記のような、一枚の「わらじ型」または「小判型」といえる扁平な楕円形に、ご飯を平たい竹または木の串に練りつけたものが最も一般的だが、地域によってバリエーションが多くあり、楕円形ではなくほとんど円形のものもある。
また、小さな円盤型のご飯を複数刺したもの、店で売られているものには団子状で見た目がほとんど普通のみたらし団子と変わらないものもある。

タレのベースに醤油を使うか味噌を使うか、ゴマとクルミを使うかエゴマを使うかは地域による。
エゴマをベースに醤油と砂糖で仕上げるのは木曽地方中北部から飛騨地方にかけての特徴である。
クルミを使っていた地方では近年は入手しやすいピーナツをクルミの代わりに使うこともある。
家庭や地域によってはさらに卵、ハチミツ、蜂の子(ヘボ)を加えるなどバリエーションは多くある。例えば岐阜県恵那市の旧串原村で毎年11月3日に開かれる「ヘボまつり」は、タレにヘボを練り込んだ「ヘボ五平」が名物である。